【短編】彼氏はきみだけ。


幼い頃から一緒だから、由惟の癖も知ってるし、勝手に部屋の出入りを許されるのも、今となってはわたしだけ。


お互いの部屋が常日頃綺麗なのは、窓を伝って、幼馴染がやってくるから。



「……なっちゃん」


「あ、由惟。おはよー」



1拍置いてから声をかけるときは、決まって不機嫌なときだ。


それに加えて、髪をいじってるってことは、相当機嫌が悪いみたいで。やっぱり今朝のこと、怒ってるかな。



「毎日一緒に登校してるのに、今日なんで先に行ったの?」


「あ……うん、ごめん」


「理由は?」



幼稚園のときから今の今まで、わたしたちはどちらかが病気にならなければ、一緒に登校してきた。


なにも言わなくても、7時半に由惟の家の前集合はいつも変わらないこと。



だけど今日は、メッセージで【一緒に行けない、ごめん】と打って送ったから、こうして由惟が遅刻をすることもなく。


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