春だから…恋。
次から次へと花束が贈られて、あっという間に、課長の顔がたくさんの花に埋もれていく。
本当は、自分だってせめてもの今までのお礼にと、ささやかなプレゼントと、
お世話になった感謝とともにひそかな思いを綴った手紙を、今日で最後だからと一緒に渡すつもりだったのだけれど、
こんなに人気のあるところを目の当たりに見せつけられたら、渡せそうにもなかった……。
女性社員に囲まれ、「相馬課長、本社に行かれても、頑張られてくださいね」とエールを送られて、
「ああ、ありがとう…」と笑顔を向ける課長を、そんな顔で笑わないでほしいな……と、見つめる。
机の引き出しを少しだけ開けて、渡すはずだったプレゼントに目を落とす。
課長に似合うものをといろいろなお店を回って、ようやく選んだプレゼントだったのに……。
それに、手紙も何度も直してやっと書き上げたのに……課長に伝えたかった思いは、宙に浮いてしまった気がした。