春だから…恋。
「え…?」と、顔を上げると、
課長はもう私の前から歩き去っていて、手を振ってフロアから出て行ってしまっていた。
(通用口に……って、なんだろう……?)
相馬課長がいなくなって、退社時刻を過ぎていることもあり、大半の社員達が帰り支度を始める中ーー
自分も同じようにデスクを片付けながら、再び渡しそこねたプレゼントが目に入る。
「……持っていこうかな、これ」
課長がどんな用があったとしても、すぐにでも渡して帰ってしまえば大丈夫だよねとも感じた。
渡してそのまま帰れば、もう会うこともないんだから、どんな意味があるのか聞かれることもないもの……。
だけど……手紙は、どうしようか。
せっかく書いたものだったけれど、恥ずかしいし渡さなくてもいいかな……と、ポケットの奥深くに押し込んだ。