スイーツ王子と恋するレシピ
「ざけんじゃねー! おまえ、よくもパクってくれたな!」

 恵斗さんは怒りが収まらない様子だった。

「人聞きの悪い…。こう言っては何ですが、町の片隅のちっぽけで田舎臭い店のケーキを、このシカオシブヤがパクっただなんて、誰も信じないでしょう?」

「ちっぽけで田舎臭い、だとお!?」
「け、恵斗さん!」
 恵斗さんが今にもつかみかかりそうだったので、わたしは慌てて制止した。
「落ち着いてください!」
「そ、そうだな、ココ。ありがとう」

 とにかく悪魔のショコラチョコケーキについて、話し合いをしなければ。

 わたしはそう考えながらも、このパティスリーに違和感を抱かずにはいられなかった。
 シャルロットよりも、うんとうんと立派な建物。きらびやかな店内。黒い制服を着た店員たちはみんなモデルみたいに美しくてスタイリッシュ。
 だけど、なんだかここは冷たくて居心地が悪い。
 シャルロットのようなあたたかさが無い。

「一体何が目的なんだ?」
 恵斗さんはケンカ腰になるのを抑えて、落ち着いた声で言った。
「どうしてオレのところのケーキなんだ? ここの方がずっと有名だろう」

 シカオは不気味な微笑みをこちらに向けた。
「まだ思い出さないのか、甘味恵斗」

「え?」

「同じ中学校だった山田鹿夫だ!」

「山田?」

 ええ? 恵斗さんの同級生だったの?
 

 
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