スイーツ王子と恋するレシピ
ひどい…

 恵斗さんはあんなに真剣にケーキを作ってこの勝負に挑んだのに…

 
 わたしは怒りと悔しさで泣いてしまいそうだった。

 もちろん恵斗さんだって。今にもシカオに殴りかかってしまいそう。

 だめ、暴力は、絶対に!
 恵斗さんを止めなきゃ!

 なのに、気が付くとわたしはなんと、恵斗さんを押しのけて、つかつかとシカオの前に立ちはだかっていて

 
 ぱしん!!


 大きな音が店内に響いた。

「ココ!?」

 わたしったら、わたしったら。
 なんとシカオに平手打ちをぶちかましてしまっていた!

「なにするんだ、このアマ! 父親にだってぶたれたことないのにっ!」

 
「もう、いいかげんにして!」
 抑えきれず涙がぽろぽろと流れてくる。もう、とまらない。
「勝ちたいなら、汚いマネしないで正々堂々と戦いなさいよ! 恵斗さんのケーキはアンタのコドモみたいなケンカのためにあるんじゃないの! 食べてくれる人が…幸せになるためにあるんだから!」

 シカオに言いたいことをすべて言い終えたわたしは「あうっ、あうっ」と変な声を漏らしながら泣き出してしまった。

「もういいよ、ココ…」

 恵斗さんは優しく、わたしの肩にさわった。

「ありがとう、ココ」

 うわあああーん

 わたしは恵斗さんの胸でさらにわんわんと泣いた。
 
 

 
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