スイーツ王子と恋するレシピ
シャルロットより愛を込めて
「でも、本当によかったんですか」

 シカオとの勝負を終えた帰り道、わたしは恵斗さんにそう訊いた。
 もうすっかり夜が更けている。
 長い一日だった。

 シカオの八百長が発覚し、恵斗さんは勝負に勝った。それなのにそもそもの問題の発端であった悪魔のショコラロールケーキの権利を、シカオにあげてしまったのだ。

「あのケーキ、恵斗さんだって苦労して…」
「ココ」
 恵斗さんはわたしの言葉を遮った。

「今から店に戻ってケーキ作るから、手伝ってくれ」
「あ…、は、はい!」

 シャルロットに戻り、わたしは恵斗さんの指示に従いケーキ作りを手伝った。

 そしてできたのは、シンプルなスポンジケーキ。

「できた。シャルロットケーキだ。これ、子どものころ、おフクロがよく作ってくれたんだ」
「そうなんですか」

「そして、オレが7歳のときにはじめて作ったのもこれだった」
「へぇ…」
「ココ、食べてみてくれ」
「はい! いただきます」

 一口食べてみると、ほわんと優しい味が口の中いっぱいに広がる。

「コレです! 恵斗さんの優しさがいっぱい詰まっていて、コレがシャルロットの看板商品です!」

 わたしが嬉しくなってそう叫んだ。
 興奮した様子のわたしに恵斗さんは笑って言った。

「そう、そうだな。フルーツを変えたりしてアレンジしてみよう」
「そうですね!」

「シャルロットっていう店の名前も、このケーキが由来だったのに、なんで今まで気づかなかったんだろう」
 恵斗さんはシャルロットケーキを見つめ、そしてわたしを優しく見つめた。

「オレたちの店の定番はずっと前からあったんだな。ありがとうココ。ありがとうココ。気付かせてくれて」

「恵斗さん…」


 どきん


 恵斗さんの手が伸び、わたしの頬に触れる。


 どきん どきん
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