スイーツ王子と恋するレシピ
「クリームついてるぞ」


 えっ!?


 わたしは慌てて指で口元をぬぐった。
「とれましたか?」

「そこじゃねーよ」

 あ…

 その瞬間、恵斗さんの唇がわたしの唇に重なった。

「ココのこと、食べたくなっちゃったよ」

「……」

 わたしは真っ赤になって下を向いた。
 心臓の音がどくんどくんと響く。

「嘘だよ」

 !!

 相変わらず意地悪そうに微笑む恵斗さん。

「まあ、嘘じゃないけど」

「もう! からかわないでください!」

「ゴメン」

 そしてまた優しくキスをしてくれた。

 わたしは目を閉じ、恵斗さんの甘いキスを受け止めた。

 …幸せ

「ゴメンな、ココ」

「何がれすか」
 わたしは頭の中が今にもとろけてしまいそうだった。

「オレさ、こんな性格だから。ココのこと好きだし、カノジョにしたいけど、ついケーキのことを一番に考えちまう」
「…」

 確かにそうだ。今回の騒動の間だって、実はちょっと不安だった。前に好き、って言ってくれてから甘い言葉も何も無しだったから。
 
「今までもさ、何度か付き合った女の子がいたんだけど、毎回毎回、大事にしてくれないって、怒られて結局フラれて終わり」

 うーん、その気持ち、わからなくはない。
 恋人には構ってほしいし、自分のことを一番好きでいてほしい。
 毎日、電話とメールもほしいし、キスもしたいし、デートもしたい。
 確かに、恵斗さんと付き合うと、不安になることが多そう…。

 だけど…。

 
 メールよりもキスよりもデートよりも

 大切なもの…

 わたしは恵斗さんにそれを感じるの



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