スイーツ王子と恋するレシピ
「て、いうても血はつながってへんのや。オレはオヤジが浮気がしてできた子やから」

「え…」

 あっけらかんとした口調でものすごい家庭の事情を言う。
 でも、その瞳が一瞬寂しそうに見えたのは、わたしの勘違いではない。

「オレが小さいときに本当の母親は病気で亡くなってしもたんや。そこでここの跡取りとして迎えられた。正妻のあの人には子どもができんかったからな」

「そうだったの」

「よくある話や」

「それで、恋愛に関してチャラチャラしてるのね」

「は? な、何やて?」

 しまった。口が滑っちゃった。
 でも、本当のことだもんね。

「ごめんなさい。でもね、こんな素敵なお店を継ぐことになって、きっとお母さまは喜んでるんじゃないかな、って思って。それだったら、浮気といえど、素晴らしいことだったんじゃないかなって。きっと運命だったんだね」

「何いうてんねん」

 レオは怒ったような、照れたような表情を見せた。

「もう帰ってもええで。お前の食べたマカロンの分は働いてもうたさかいに」

 怒らせちゃった? でも、でも、これだけはおせっかいかもしれないけど、言いたい!

「旅行者をひっかけて女遊びするのは、もうやめるって誓って!」

「は、はぁ!? よけいなお世話や!」

「レオも運命の人を見つけて、その人といっしょにこのお店を守ってもっと大きくしてほしい」

「……」

「レオに幸せになってほしいの!」
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