召喚魔法失敗しました!?
しばらくして、またぎゅっと抱きしめられる力が強くなるとゆっくりとウィリーが語り出す。
『……俺は昔孤児だった。盗みをしながら悪に手を染めていたクソガキだった。そんな俺を本気で叱って、泣いてくれた人がいた』
ウィリーの過去。
私の知らないウィリーの話。
背中に腕を回し、きゅっと力を込めた。
『その人は俺を強くしたいと願った。心も魔力も。拾われた先はとある騎士団だったんだ。そこで俺は夢中になって勉強をして、力をつけていった』
「……その魔力生まれつきじゃなくて、努力の結晶だったのね」
『そうだ。そしていつの間にか俺の力は魔界で一番の兵士に踊り出た。そこで任された任務が、ここ人間界へと逃亡した奴を捕らえることだった』
髪を撫でるその手が少しだけ震えているような気がした。