【短編】それでもあなたが好きです。
◆1 それでもあなたが好きです。
「あの……っ、付き合ってもらえませんか!?」
「………」
電車を降りてすぐ、金髪が特徴的な彼を引き留めて、気がつけば初対面のひとに、そんなありえないことを言っていた。
出逢ってすぐ、付き合ってとかおかしいかもしれないけど、でも今すぐ彼氏になってほしかった。
「……べつにいいけど」
「え!? ほんとですか!?」
そして、まさかのオッケーがもらえた。
金髪に、鋭い目つきと、刃のように尖った口調と豹柄のジャージ姿の彼は、はっきり言えば、不良そのものだし、理想のひとじゃない。
メガネをかけた黒髪の学級委員のようなひとが、タイプのわたしが、どうして彼にこんなことを言っているかというと。
足腰の悪そうなおばあさんに、電車内で席を譲っていた彼は、一度は怪訝そうに断ったおばあさんに、
『席空けておくので、無理せず遠慮なく、座ってくださいね』
と、身なりに合わず言っていた。
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