【短編】それでもあなたが好きです。
「こわい夢見て、暴れてた。ごめん」
「ふうん、そう。もう朝ごはんできるわよ」
「あ、要らない。今日は約束があるから、早く行かなきゃならないの」
これ以上お母さんといたら、嘘がバレてしまいそうで、嘘に嘘を重ねて、慌てて家を出た。
朝食食べないから、途中でお腹空くだろうなあと、駅に向かいながらのんびり思う。
寝静まってからのスマホは禁止、つまり昨日のがバレたらスマホ没収ってこと。
だったら、琥珀くんにそう言えばよかったんだけど、琥珀くんがせっかく話したいと言ってくれたんだから、
たくさん話したかった。
「朝食がなんだ、ルールがなんだ!」
ひとり、駅のベンチで空腹を誤魔化すために、ミネラルウォーターを飲みながら、息を吐いた。
わたしの恋に、犠牲は付き物なんだ、と思って、それでもうちのルールは厳しすぎる! と、やや不機嫌になりなっていると……。