【短編】それでもあなたが好きです。
「なあ、訊いてる?」
「あ、訊いてます! お母さんと気まずくなっちゃって、食べられませんでした」
「……敬語」
気づけばまた、敬語を使っていて、琥珀くんが去ろうとしたから、わたしは急いで、琥珀くんのシャツの裾を掴んだ。
そうなるのがわかっていたかのように、振り返った彼は、ぐいっと顔を近づけて、「敬語、やめるか?」と訊いてきた。
「やめま……やめる! やめるから、待って」
「次敬語だったら、マジで帰るから」
「う、うん……」