【短編】それでもあなたが好きです。
自分がなにをしたのか、彼自身が気づいているはずなのに、琥珀くんはどんどんわたしに迫ってくるし。
ベッドの隅に追いやられたわたしに、ベッドを軋ませながら、さらに近づいてくる彼は、相変わらず無表情。
でも、怒っているように見えた。
「取り消せっつってんの。突然意味わかんねーし」
「綺麗な女のひとが本命のくせに!!」
「……なんだ、それ。誰が言ったんだよ。あ?」
できるものなら、わたしが『あ?』と脅してやりたかった。
わたしが駅で見たことを全部話すと、なぜか琥珀くんは、あははっ、と高らかに笑った。
「なんだ、あれのことか」
「わ……、笑うなんて信じらんない!」
「うん、ごめん。でもさ、それ勘違いなんだよ」