【短編】それでもあなたが好きです。
【お前の名前聞いてねーや】
【一椛(いちか)です】
【サンキュー】
訊かれないのかと思って、ちょっと焦っていたから、訊いてくれて嬉しい。
ただそれだけなのに、こんなに胸が弾むなんて、よっぽど琥珀くんのことが好きなんだ、わたし。
【つーか、こんな時間にわりい。明日も学校だろうし、この辺にしよう】
【はい。話せて楽しかったです】
【うん。明日、敬語使ってたら既読無視だから。おやすみ】
そういうこと気にしなさそうなのに、敬語を使っていたことが嫌だったみたいで。
でも、わたしも今気がついた───敬語を使っていたこと。たぶん、知らないうちに緊張していた。