貴方が手をつないでくれるなら
・キミの事が知りたい
「…お、…ぅお゛?…お、……お゛ぉ~」
「…何だよ、妙な声、急に出して…。本格的に変態になるつもりか?」
「はぁ…、馬鹿、震えが止まらないんだ。あ、止まった」
「はぁあ?…何だって?…悪い病気か?アルコールか?まさか…お前…薬やってんじゃ」
「はぁ…するか馬~鹿。……これだ」
携帯を摘んで見せた。
「ん?…なんだ、携帯の着信か…。大層な事言うから、何事かと思うだろ。そりゃ震えるわな。そういうもんだ。今に始まった事じゃないだろうが。…くだらない」
「いや、初めてだ。…これ、紛れもなく例の彼女からのメールだよ。…ほら」
「本当か?やったじゃないか。どれどれ、見てもいいか?」
「馬鹿、止めろ。俺が先だ。俺に来たメールだ。まだ読んでないだろうが」
「職務中ですけど?しかも、いつ容疑者が出て来るか解らない、緊迫した状況だけど?」
「だったらお前にも見せないからな」
…子供か俺らは。
「いいから早く見ろよ…。こっちは俺が見てるから、ほら、今の内、早くしろ」
「悪いな」
「読んだか?どうなんだ?」
「急かすな、まだ途中だ。…あぁ、許して貰えたみたいだ」
「ん?会ったりせずに、許すって事か?」
「これで終わりにしたいんじゃないかな。そんな感じだ」
「どれどれ、もういいか?」
「…あぁ、ほら」
「こっちも、見ててくれよ?」
「…解ってる」
俺の手から携帯を受け取り読んでいる。
「…なる程な。これ以上は関わりたくないって感じだな。俺達は名前を知っているが、これには名前すら入れられてない。まあ、丁度入れられなかったのかも知れないが。
だけど、もう連絡はしないでくださいとか、拒絶の言葉は無いじゃないか。もしかしたら、連絡はしてもいいって事じゃないか?
電話じゃなくて、こうして長文をわざわざ分割してまでメールしてくれたのは、お前の仕事を気遣ってくれた証拠だよ。悪い印象は無くしてくれたのかも知れないけど。ここまでしても早く終わらせたかったとも取れるのは取れるな。彼女にしてみたら、俺らはここまでの人間だって事かな。な?これで終わりだって事だ。…ほら」
読み終わった携帯を返された。
「あ?あぁ、まぁな」
何も関わりの無い人間だ。いや、関わりたくない人間の位置だな。
「で、どうするつもりだ?まだ直接会ってちゃんと口で謝りたいって伝えてみるか?向こうから許してくれても、お前自身はまだ謝って無いんだもんな。礼儀としては駄目だよな」
「ああ。だいたい…、お前が先に会うからこんな事に…連絡先なんか伝えるから…」
「ぁあ?だけど、俺が偶然会ったから今があるんじゃないか。連絡は取れるじゃないか。会いたいって、会ってちゃんと謝りたいって、伝えろよ」
「お前に言われたく無い。俺がするんだから」
「そうだよ?あ、おい、一先ずここまでだ。星が出て来たぞ。行くか」
「おお、行くぞ」
じっと眺めていた携帯を内ポケットにしまった。