貴方が手をつないでくれるなら

RRRR.RRRR…。

「…はい」

「おい、聞け」

「……何だよ、いきなり…はぁ、お前か、切るぞ…」

「待て待てー。いいから聞けよ」

「…はぁ。俺、寝てたんだぞ?電話で連絡して来るな。緊急の呼び出しだと思ってつい出るだろうが。良い子は早寝早起きだろ?……んで、…何だよ…」

「おぅ。……眞壁日向さんとメールしてた」

「…そうかよ。…で?」

「アドレス、教えてくれたぞ。それから、金曜にあのベンチに居るって教えてくれた。時間もだ。な?凄いだろ?」

「良かったな、じゃあな、おやすみ。…ぁ゙あ゙?ちょ、おい、会えるって事になったのか?」

「そうだよ?」

「ふ~ん。事件が起こんなきゃいいけどな~」

「フ、そこは…まあな。会う約束って、したようでしてないと同じだ。そこのところは、お前のお陰で、最初から俺の職業知ってるから、理解して貰えてるって訳だ」

「だろ?俺、結構お前の事、褒めたくもないのに、いい奴だって言って謝ったからな」

「まあ、まだ名前は名乗ってくれないけどな」

「そうなのか?」

「ああ」

「まあ、その内なんじゃないのか?案外、言ってない事に本人気づいてないパターンかもよ?伝えた気になってるかもな」

「どうだかな~」

「あー、眠気が完全に覚めるから、もう寝るぞ」

「おぅ、悪かったな、つい」

「おぅ、嬉しくて、つい、だろ?…おやすみ」

「ああ、おやすみ」

…ふぅ、町田の野郎なんかに連絡してしまうなんて。やっぱり、嬉しくて、つい、だよな。後は金曜日に行ける事を願うのみだな。そうそう凶悪事件や誘拐なんて長丁場、無いだろう。

しかし、その考えは甘かった。数日後には強盗殺人が起きてしまったからだ。
犯人は逃走中。
厳戒態勢だ。
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