貴方が手をつないでくれるなら
「残念だったな、柏木」
後ろの方の席で隣り合って座り、小声で話していた。
今は捜査会議中だ。
「事件じゃ仕方ないだろ。早期解決の為にも容疑者を早く断定しないとな」
「まあな。しかし、なんで殺さないといけないのかね。顔見られるような格好で押し入った訳でも無いだろうに。それとも、本当に行き当たりばったりで、金が欲しくてだったの、かね。あ、今の最後のとこ、シャレじゃないからな?」
「解ってるよ。人が亡くなってるんだ、そんな不謹慎な事、言わない事くらい」
「大金があった事は偶然だったのかな。やっぱ、知っててそこは計画的にだよな」
「どうだろう。外から見ても金がありそうな家だけど。あれだけ塀に囲まれていたら、入ってしまえば後は楽だっただろうな。番犬も居ないし。殺しまでするとなると…目的は…恨みと金…かもな。だとしたら、見えて来ないか?犯人」
「金持ちの家の主は阿漕な事でもしてたんかね」
「さあな…。人は見掛けによらないって言うし。聞き込みして出て来る証言なんて、どうせ決まり文句みたいなもんばっかりだろ。結局、他人の本質を知ってる人なんて居やしないんだよな」
「ああ。近所の聞き込みも、有り体にする事になってるけど、今時の新興のご近所さんなんて、つき合いなんてしないだろ?まして際立って金のありそうな人間と、腹割ってつき合えんのかね」
「つき合いが無いから、つき合いがあったかも知れないぞ。金貸しとか、さ」
「あー、なんだかそれ、臭うな。内緒の金貸しか…。貸金業法が変わってから、困ってる人も居るらしいからな」
「…ああ」
「そこら辺、当たってみるか」
「だけど、これは捜査方針に外れるからな」
「だけど、やるだろ?」
「まあな。出世コースから外れたくないお偉いさんは、自分らの決めた方針以外は認めない。提案したところでそれは無いだろうの一点張りだからな。外国人の強盗犯て事から方針を変えないらしいから」
「なんでもいいさ。真犯人を捕まえたらいい事だ」
「ああ」
「なあ、前のお偉いさんは、俺らの何倍、報酬があるのかね~」
「さあな。明確に知ったところで、やる気が失せるだけだ」
「だよな」
「ああ」