貴方が手をつないでくれるなら

「居なかったぞ、ぼけ。だからもっと早く言えよ」

「んあー、そうか、すまん。なあ、なんで連絡しない」

「あ?」

「携帯で連絡取れるだろ。すりゃーいいじゃないか」

「ん、…まあ、な」

「向こうからは連絡し辛いんじゃないのか?曖昧だから」

「曖昧?」

「だって、お前ら、今はただの知り合いじゃん。それ以上でも以下でもない。友達でも無い。まして、好意があるとも言ってない。ただ会えたらいいみたいな。それじゃあな~」

「…言えないだろ」

「はぁあ?何を…」

「いつどうなるか解らない。そんな仕事だ。簡単には言えない」

突然居なくなるかも知れない確率は高いとも言える…。一生の責任を負えないかも知れない…。

「それ、やっぱり気があるじゃん。じゃあさ、会うのもやめろよ。…最近死にかけたからってな、何、弱気になってんだよ。今のご時世、明日が解らないから悔いのないように今日を生きるんだろうが、それは俺達に限った話じゃない」

「それは…俺の問題だ」

「ああ、お前の問題だし、彼女も彼女の人生を生きている。明日どうなるか解らないのはみんな同じだ。それは彼女もだ。
だけどそれに関わって何が悪い。お前に何かあったら、その時になって彼女が考えるだけの事だ。まあ、まだ恋人でも何でもないけどな~。変態から昇格した、ただの知り合いの刑事?」

「何か言ってたのか?」

「あ?何も。俺は通り掛かっただけだから。それに余計な事は勝手に言ってはいけない事になっている。確かそうだよな?何か?謝る事に関しては余計な事はしないで欲しいけど、こと、恋愛に関しては俺に余計な事をしろとでも?」

「そんな事はいい」

「いいんだよな?」

「いいんだ」

「俺は、俺の為になる事しかしないから」

「は?どういう意味だよ」

「さあな」

「あ、お前、眞壁さんの連絡先、知らないままでいいのかよ」

「いいって言ってるだろ?」

「なんでだ」

「必要無いからいいんだ」

「ふ~ん、じゃあ、聞いて来るなよ?」

「聞きませんよ」

今の状態で俺が知ったところでなんにもならない。知らない方がいいんだよ。…仲介人になるのはごめんだ。

「おい、聞き込みに行くぞ」

「ああ」

「疲れないか、大丈夫か?体力、落ちてるだろ」

「ああ、確実に落ちてるな。だけど、そうは言ってられないだろ?」

「まあ、走り回ってるうちに戻って来るさ。なんせ、事件は待ってくれないからな」

「…はぁ。まあな」
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