貴方が手をつないでくれるなら
どこまで聞いていいのか、解らない事ばかりで。
聞いてもいいのかな。
「柏木さん、拳銃って撃った事ありますか?」
「ありますよ。…訓練で。現場ではまず撃つ事は無いんです。使用許可が無い場合、持つ事はありません」
「そうなんですね」
「そう思え無いでしょうが、ドラマみたいな事はほぼ無いです。逆に交番に居る巡査は持ってるでしょ?どこに居るかで違うんです。俺らは初めから必要だと予想された時は持ちます。そんな時もあります」
「そうなんですね。では突然というか凶暴な人と対峙してしまったら…素手?あ…丸腰?」
拳銃というより、ナイフとか持っていたとしたら……。また…。
「フ。まあ、ずっと睨み合いをしている訳にはいきませんから。制圧します」
「はぁ…恐いですね…本当恐い…。単純な言い方をしてすみません。刑事さんはやっぱり強く無いと出来ませんね」
強くても…危ない…。
「そうですね。身を守る為、にも、強い方がいいでしょう。肉体も、精神も」
「はぁ、今更ですが、…大変な…お仕事で、すね…。興味本位で聞いて…何だか…ごめんなさ、い…」
…。
ん?……ん?……あぁ、眠ったみたいだな。…はぁぁ。
…あ゙ー。俺は…。連れて来てしまった……しまったじゃない。随分大胆な事を、言った、…した。俺じゃ無いみたいだった。あ゙ーあー゙……。
店の前から2階を見上げていた時、俺がここに居るって、通じたら凄いだろうなって思っていた。そんな…都合のいいこと、起きるはずもないとは思っていた。
そしたら、どうだ。ニュアンスで、居るって感じ取ってくれた。途端に何かがワーッと沸き上がって来た感じで、俺は我を忘れた。そうだ。自分がよく解らなくなった。何もかも、幸運という幸運が全部一緒になったのかと思った。
どこに出入口があるのかも解らないのに、店の角を曲がって裏に走った。
下りて、出て走って来た彼女がぶつかって、まるで俺の中に飛び込んで来たみたいに思えた。
…離しちゃいけない、掴まえておかないと。このまま、何と言おうと奪って帰ろうと思った。
こんな事は二度と無い、運命みたいなモノだと思った。色々言っていた事が、まどろっこしくて、もどかしかった。本当は窺いなんか立てずにずっと抱きしめたかった。上にお兄さんが居ると解っていたにもかかわらずだ。
はぁ、…信じているなんて言われてしまって。解ってはいても自信が無くなりそうだった。
だから、わざと不安だと言った。勿論不安の意味は違う。当然、男としての不安だ。だけど…。
「お義父、さ、ん…」
あぁ。…うん。はぁ………今夜はお義父さんに助けられたな…。本当は、手なんか出すなよって、見守ってるのかも知れないな、娘さんの事。
…よく眠っている。目覚ましのアラームはセットしているようだから、朝送って行こう。
こんなに自然に寝られると、何だか俺も…、勝手にバクバクしてる場合ではない。落ち着こう。……寝られそうだ…。