【短編】ファースト・キスはあなたの部屋で
確かこのドラマ、がっつりラブロマンスだったような…。
そう思い出した時にはもう遅くて、テレビの画面の向こうの役者さんたちは、ロマンチックなBGMに合わせて、自分たちの心の内にあったお互いへの気持ちを話していく。
「それ何話?」
「最終話」
「ふーん。見てた?」
「ううん。全然わかんないまま最終回」
「なんでそんなもん見てんだよ」
「暇なんだもん。翔真が漫画買ってこないから〜」
「すぐ俺のせい」
「だってそうだもん」
お互い顔を見ずに、目線はテレビ画面に向けたまま、ドラマの雰囲気とは全然似合わないやり取りをする。