予言写真
「昨日から寝てないの」


「どうして?」


「これを見て」


そう言って愛子がエナメルのバッグから取り出したのは、みんなの集合写真だった。


あたしは咄嗟に視線を逸らせた。


もう見なくていいようにしていたのに、どうして持ってくるんだろう。


「こんな写真を見てたら眠れなくなっても仕方ないよ」


「そうじゃないよ梢。ここを見て」


愛子にそう言われてあたしは仕方なく写真に視線を落とした。


できるだけ和夫を見ないように気を付ける。


愛子が指さしている右上を見ると、そこに微かに黒いモヤのようなものが見えた。


気のせい?


そう思い、目をこする。


しかしそのモヤは消えなかった。


写真の右上はただの空が写っているだけだ。


あの日はよく晴れていて、黒い雲なんてどこにもなかったはず。
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