私のメモ

「運べ運べ運べ~!料理冷めるぞ!」

「おっせぇんだよ!『松』の席にさっさとビール持ってけ!」

「料理一人分足りてませんけど!!」

「ふざけんな!」


きらびやかな宴会場の舞台裏では、こんな怒声が行き交っている。

今日は約200人の大宴会。
とんでもないところに迷い込んできてしまったみたいだ。目眩がする。


私は、入社してすぐぐらいに1ヶ月程、宴会部にいたことがある。
でも遥か昔過ぎて、何もかも忘れてしまっているし、こんなに大人数の宴会は久々で、自分がどう動けばいいのか分からない。


「新入社員、こっち!」

そんな声が聞こえて、反射的に返事をしかけた。
けれど、後ろから元気の良い「はい!」が聞こえて、思いとどまる。

危ない、危ない。
私は既に新入社員じゃなかった……。


先日入ってきたばかりの、新入社員達が、先輩に色々教わりながら、仕事をしている。

羨ましい。是非、そこに混ぜて頂きたい。(先輩のプライドとか、そんなもんはない)

宴会スタッフは、自分の仕事に精一杯で、「近づくな」「話しかけるな」オーラが半端じゃなくて、怖いぐらいだ。

今、何をすればよいのか、指示してくれる人は、ここにはいないのだろうか。

ヘルプなのに、明らかにヘルプ出来ていないし、寧ろ足手まといになっている気がする。


「おい、高畑!! そんなとこで突っ立ってんな!!」

……そして名前も分からない先輩に怒鳴られる。


「すんません!!」

これだから、宴会には来たくなかったんだ。
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