私のメモ

歓迎会

皆さん、ゴールデンウィークお疲れ様! そして新入社員の皆、これからよろしく!乾杯ー!

宿泊課の課長、花田さんがビールジョッキ片手に乾杯の音頭をとった。

みんな口々に乾杯!お疲れ様です!などと口にしながら、開放感を分かち合うように、グラス同士をぶつけ合っている。

そんな中、私はというと、グラスも持たずにテーブルの端でぼけっと座っている。まるで地蔵のように。

どうして一杯目は「とりあえず生中で!」になり、強制的にビールが充てがわれるのだろう。
飲み会でのこのルールが本当に理解できない。ビールが苦手な人への配慮ゼロじゃないか。

2〜3口飲んでみたものの、その美味しさがわからないまま、浮かんでいた泡はどんどんと消えていく。

周りはなんとも騒がしい。
シフトの関係もあって全員とはいかいけれど、フロントのメンバーを中心に、予約係、営業、管理課など20人ほどが集まってワイワイと盛り上がっている。

私はその輪に入っていくコミュ力もないし、むしろ水をさすことになると分かっているので、地蔵になるしかない。

何か飲もうにも、グラス交換製だから、まず最初のビールを飲み切るまでは自分の好きな飲み物さえ注文できない。なにこれ。

誰も私に話しかけてこないし、私も会話出来そうな相手が居ない。(同期の沙耶は、デレデレした男性社員に囲まれていて、私ごときが割って入れる雰囲気ではない)

唯一楽しみにしていた料理は、なかなか運ばれてこない。

手持ち無沙汰になり、おしぼりでアヒルなどを作ってやり過ごす。

あれ?私は歓迎される側では無かったっけ?
急に虚しさが襲ってきた。

私をこんなところへ連れてきた張本人はおじさんグループにしっかり馴染んで話し込んでこちらを気遣う様子もない。
いや、気遣ってほしいとかそう言うのではないけど……

とにかく武田さんのバカヤロー!!!!

ヤケになった私は無理やり緩くなったビールを流し込んで、生搾りグレープフルーツ酎ハイを注文した。

「生搾り系は飲み放題に含まれず、別料金となりますがよろしいですか?」

店員さんに確認されたが、「あ、はい。よろしいです」と即答した。

別料金?そんなの知ったことではない。
お金を一銭も出さなくていいと言う条件で私は来たのだから、追加のお金かかろうがなんだろうが、好きなものを飲む。
皆と違うものを飲んでいたとて、誰も私の飲み物に注目することは無いだろうし。

しかし、空腹にビール一気飲みはなかなかキツイ。頭がふわふわとする。
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