俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません


担任はこのままじゃ退学になるぞなんて脅してくるけれど、正直それでもいいと思っている。

それを言ったら担任は、じゃあお前、退学になったら働くのか?と問うてきた。
俺は、知らねえよと答えてさっさと帰った。

それも、もう3週間前の話だけど。


正直、俺は、今ここで死んだって構わないと思っている。

この人生に悔いがないと言えば格好良いのかもしれないが、悔いるほどの思い入れがないと言う方が当たっている。

とりあえず、つまらない現世と別れたいんだ。


しばらくぼーっと空を眺めていたが、それにも飽きてきて、公園から出ようとベンチから立ち上がった。



「わっ………」

小さく驚く声が漏れた。

誰もいないと思っていた公園の入り口に、女の子が一人でこちらを見て立ち止まっていたからだ。

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