俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません
「…俺は、プロとかは正直考えていなかった。でも、音生の声と俺らのバンドが、どこまでいけるのか見たいと思っている。俺の夢が何かはまだ分からない。だけど、その何か分からない夢を、音生とイツと叶えたいと思っている」
「そうか。じゃあ、俺もその夢に入れてくれないか。一緒に夢を叶えようぜ」
「……音生、」
俺はペンを走らせ、紙を一つ音生に渡した。
『音生は、こいつと一緒に夢を追いかけたいか?こいつはプロになって有名になりたいらしい。こいつを仲間に入れるかどうかは音生が決めろ』
すると、音生は迷うことなくすぐさまペンを取り出してこう書いた。
『もちろん。一緒に大きい夢を叶えよう』
俺は迷いなんて一切ないその返事を読んで、ふっと笑った。
何でも受け入れて、理由なく信じる。
音生らしい返事だ。
「…だってさ」
俺はその紙をそのまま和田に渡した。
和田はそれを読んで嬉しそうに笑うと、
「よっしゃ!じゃあ、今から今日の反省会と歓迎会しようぜ!!」
と俺の肩に腕を回した。