俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません
「…さて、俺の自己紹介が終わったところで、今日のライブの感想、というか批評をしようと思う」
膝をパンッと軽く叩くと、拓実は真剣な表情を浮かべてそう言った。
「…批評?」
「そうだ。今日、お前たちの演奏を聴いて俺が思ったことを率直に、辛辣に言わせてもらう。…キレんなよ、椿」
「誰が」
俺は鼻で笑った。
すると、拓実も馬鹿にしたように、はっと笑って、
「お前、見たところ脳みその血管キレやすそうだからさ」
「は?なめてんの?」
「そういうとこだよ」
そう図星を突かれて、俺は言い返せなくなって黙った。
「じゃあ、紙に書くな。食って待っとけ」
拓実は目の前のご飯を少し端に寄せ、メモ帳にまた何かをつらつら書き始めた。
俺ら三人はそれを視界の端で見ながらご飯を食べ進めた。
何分かして、拓実がペンを机に置いたので、俺らも箸を止めた。
拓実は紙を音生に差し出し、話し始めた。