二つの気持ち
例えば、嫌な事があると、腹痛がする子どもみたいに。
家に帰りたくないと、駄々をこねる子どもみたいに。
とにかく逃げ出したかった。
だけど、解決しなくちゃいけない問題は、後回しにしてはいけないんだ。
海沿いをのんびり歩くのも、本当は嫌いじゃない。
だけど、冷静になれない私は、遠くに見えるライトアップされた橋を見ながら、昨日会ったばかりの知樹の腕に、軽く腕を回して、携帯の電源を入れた。
そして。
メールの問い合わせをするより先に、アドレスの井上を探し、着信を入れることにした。
知樹は、ただ、その様子を確認して、何をするでもなく止まっていた。