二つの気持ち
これは、仕方ない痛み。
人を少し傷付けることは、痛みを伴う。
だけど、それは優しさで、このままズルズル行くことは、少しズルくて、井上の事を思っていないからだと思うから。
それを偽善と言われても、アタシなりの優しさだと思いたい。
「良い娘、探してね」
電話越しに鼻を啜る音がした。
それを聞かないフリをすると、掠れた声で井上は返事をした。
「…そんな事言うなよ。」
…その続きは聞きたくないと思った。
「じゃあね…」
強引に電話を切ろうとすると、
「おいっ!!」
と井上が叫んだけれど、そのままの勢いで電話を切った。