二つの気持ち
「…で?その後どぉよ?」
と、会話をとりあえず繋ぐかんじで、口を開いたのは知樹。
あの日以来、久々に知樹に会う。
もちろん今日だって待ち合わせした訳でもないのだけど。
「…なかなか最悪よ」
と、グラスに口を付けると、思い出したように呑むのを止めた。
「ってか、なかなか奇遇ね。
もしかして張ってたの?」
と笑いながら言うと、
「まぁね」
と適当に流された。
それでも、一緒に流れる空気は心地良い。
知樹はそんな人だった。
あの日、一緒に居たのに、電話番号すら聞いては居なかった。
それでも良いと思ったし、それでもまた会えると思っていた。
事実、ココに来れば、やっぱり知樹は居た。