修羅場の色
 会場では、始めに皆の前で挨拶をした社長は貫禄があり、日頃の感謝を大手企業、下請け会社、そして社員へと送る熱い事葉が響いた。
 
 そして、良く知らない大手企業と思われる偉い人達の挨拶やらが行われた後、立食パーティーとなった。


 高齢の方も多く、椅子に座っている招待客の為に私はお料理や飲み物を運んだりと忙しく動いていた。


 ときどき目を向ける副社長は、大手の企業の方相手に何か話をしているようだ。

 その横で彼女は、笑顔で話に相槌をうっている。


 そして、副社長がスルーした下請け会社の方達にも声を掛けた。

 彼女は下請け会社の方達の話に、終始笑顔を絶やさず耳を傾けていた。


 その笑顔は、綺麗で作られた物では無い気がした。



「副社長の奥様って凄く綺麗な方よね。女優さんみたい」

 横から声を掛けてきたのは、総務部の松崎美紀さん、私の五つ上の先輩だ。


「ええ」


「彼女、結婚する前はうちの会社で現場代人やっていて、女とは思えない程の実力だったらしいわよ。大手の企業からも信頼されている上に、下請け会社からも慕われていてかなりのやり手だったみたい。結婚と同時に退職しちゃって、会社もかなりの痛手だったって聞いたわ」


「へ―。そうなんですか?」


「ねえ、私達も食べようよ」


 松崎さんはお料理の並ぶ、カウンターへと向かって行った。
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