年下なんて、だいっきらい!
自分でもよくこんな声が出たなと思うほど、冷たい声が出た。
だが彼はひるまなかった。
「僕は新人ですが、人との付き合い方は色んなところで学んできました。あなたの教育方法は、人を潰そうとしているとしか思えないですね」
「潰すつもりなんかないわよ」
「ですが、彼女の顔を見てくださいよ。これからやる気満々で仕事出来そうに見えますか?」
彼に言われて、百合は宮脇さんの顔を見る。
今にも死にそうな表情を浮かべている。
「あなたどこの所属なの?」
「デザイン部です」
真っすぐな瞳で彼は言った。
こういう奴が現実に直面して一番最初につぶれるのよ。
「そういう偉そうなことは、ちゃんと研修期間を終えて数字を出してから言ってちょうだい」
踵を変えて歩き出す。
次の店舗に行って数字をチェックしないと、今日も残業が免れない。
西 優人。
生意気な奴。
大学出たてのおこちゃまが偉そうに、仕事の口出ししてるんじゃないわよ。
心の中で毒づいた。
百合がいなくなった後、店長の宮脇が優人に「大丈夫?チーフ性格きついから……」と優しく声をかけた。
「かっこいいっすね。あのチーフ」
白い歯を見せて優人は笑う。
「……は?」
「ああいう媚びない人ってまだいたんだな」
「……」
レジの上に改善方法と書かれた紙を取り上げて、優人は宮脇に手渡した。
「ってかツンデレ?この紙、びっしりですね」
その紙に書かれていたのは、店舗の改善案が綺麗な文字で隙間なく書かれていた。
そのうちの十個でも実践すれば、少しは数字も上向きになるのではないかと研修期間の優人でも分かるものだった。
「……」
悔しそうに唇を噛みしめて、店長の宮脇はディスプレイの位置を変え始めた。