漆黒の薔薇
「じゃあな、恭平」
───バーンッ!
頭を撃たれたお父さん。
『い、嫌…』
お父さんが殺された。
もっとも信じていて、背中を預けていた仲間に。
『ゆるさ、ない…許さない!』
気が付いたら私は相川さんに飛びかかっていた。
「お嬢ッ!」
組員が止めに入る声なんて耳に入らない。
『信じてたのに…っ!』
そう言って私は拳を振り上げたが、その拳は呆気なく相川さんによって止められた。
「お嬢、甘ぇよ。お嬢に喧嘩を教えたのは誰だと思いっている?」
私に喧嘩を教えてくれたのは相川さん。
勝てるはずなんて、ない。
『おとう、さん…!』
お父さんが殺された。お父さんが築き上げてきた組が潰された。
今日、唯一の家族が殺された。
そして、唯一の居場所が奪い取られた。