追いかけて、1mm



2年6組、そう書かれた教室の前で私たちは立ち止まる。他のクラスの女の子が覗きに来ていたり、全然見知らぬ顔はもしかしたら先輩かもしれない。



「あーこの光景が1年間続くと思うと鬱になりそう。」



桜井怜央と高橋勇太。
同じクラスになった女の子は2人のうちどっちかのことを1回は好きになったことがある、なんて言われてるらしい。
去年は2人がクラスが離れていたから被害は少なかったというが、傍観者だった桃ちゃんと私から見たらあれは学級崩壊としか言いようがなかった。

抜け駆け禁止だよ、なんて言いながら皆でこっそり距離を縮めて、縮めたつもりになっただけで告白して振られて、それがバレて学校に居づらくなる女の子を何人も見てきた。

高橋勇太と同じクラスなだけで去年はうんざりしたっていうのに、今年は2人揃ったなんて。



「学級崩壊どころじゃないね。」
「わたし、今年も桃ちゃんとしか仲良くなれない気がする。」



【王子】なんて呼ばれてる2人のことが、好きでも嫌いでもない私たちには関係ない、そうこの時は思っていた。



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