名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
その耳がひと刷毛赤いから、わたしが折れることにしよう。


「……しょうがないな」


繋いだ手に熱を奪われながら、隣を並んで歩く。

オレンジ色のアスファルトに影が重なる。

あちこちから夕飯のいい匂いが漂ってくる。


今日の晩ご飯何だろう、と、そんなことを思った。


「そうちゃん、今日の晩ご飯何か聞いた?」

「鍋だって」

「あ、じゃあうちも鍋かあ」

「多分」


そうちゃんの家とわたしの家の晩ご飯が同じなのは、最早お決まりのことだ。


何鍋だろう、と想像する。


ただいまあ、と玄関を開けたらきっと、おかえり美里お、とお母さんの返事が返ってきて、そうちゃんがお隣の扉を開ける音が聞こえるんだろう。


そうしてそうちゃんも、お隣できっと、ただいまあ、と言って、おばさんがおかえりい、と返すのだ。


幸せで大切な放課後を、帰り道を、大事に大事に思い描いた。


これからも、手を繋いで歩きたいと、思った。
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