名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
一生懸命何を作るか考えて、一生懸命日程を調整して何度も練習して作って、精一杯のラッピングをしたチョコレートは、行き場をなくして結局わたしのお腹に収まった。


わたしの精一杯のチョコレートを当時の精一杯なわたしが自分で食べたのは、誰にも渡したくなかったから。


そうちゃんに渡せないなら、この持て余す気持ちを誰にも渡したくなかったから。


お母さんにも、お父さんにも、友だちにも。


喉を詰まらせながら食べたチョコレートは、ひどく甘くて苦しかったのを覚えている。


去年、おばさん伝いにでも何とか渡そうかと考えていたわたしを止めたのは、そうちゃんの呟きだった。


もうすぐバレンタインだな、とそうちゃんが友だちと話しているところに、偶然通りかかって。


そして。


『まあお前は絶対もらうよな、毎年そうだからムカつくわ』

『……別にいらないんだけどな、チョコレートとか。あんまりたくさんもらっても困る』

『じゃあ俺に分けろよ羨ましい……!』

『は? やだ』

『やだってお前、いらないんだろー! 好きな人がいるとかならともかく!』

『……いや、好きな人、いるけど』


——うそ。そんな。
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