名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
「隣、来ないの?」
「え」
切れ長の目が、わたしを探して不思議そうにまたたかれる。
放課後、まだ人通りが多い帰路にちょうど着いたころ。
周りに人がいるのを気にして、ゆっくり一歩ぶんずらして歩いていた。
一番気にしていたのは、道路の反対側に見える背の高い女の子だ。
あの人はどうやら、……そうちゃんのことが好き、らしい。
そう言っているのを、今日の掃除のときにたまたま聞いてしまったのだ。
佐藤くんかっこいいよね、と。それから、佐藤さんってちょっとね、とも。
分かってる。
わたしがずるいのは分かってる。
でもやっぱり、口さがない噂話には、いつも落ち込んでしまう。
そうちゃんは焦れたように立ち止まった。
「ねえ、早く。遅いんだけど」
苛立っているのでも、怒っているのでもない声色。
「っ」
まるで当然みたいにわたしを呼ぶから困る。
そんなことで好きが積もる。
周りの目を気にして腰が引けるのは、わたしばっかりだ。
そうちゃんは振り返ったまま待っている。
一歩ぶんしか先にいないのに、それほど離れてはいないのに、距離が遠い。
足が重い。
あの頃みたいに手を引いてはくれないのが、無性に寂しい。
離れたのに。
話しかけてくれなくなったのに。
わたしを避けるくせに。
放課後だけ一緒に帰るのは、ずるいよ。
「え」
切れ長の目が、わたしを探して不思議そうにまたたかれる。
放課後、まだ人通りが多い帰路にちょうど着いたころ。
周りに人がいるのを気にして、ゆっくり一歩ぶんずらして歩いていた。
一番気にしていたのは、道路の反対側に見える背の高い女の子だ。
あの人はどうやら、……そうちゃんのことが好き、らしい。
そう言っているのを、今日の掃除のときにたまたま聞いてしまったのだ。
佐藤くんかっこいいよね、と。それから、佐藤さんってちょっとね、とも。
分かってる。
わたしがずるいのは分かってる。
でもやっぱり、口さがない噂話には、いつも落ち込んでしまう。
そうちゃんは焦れたように立ち止まった。
「ねえ、早く。遅いんだけど」
苛立っているのでも、怒っているのでもない声色。
「っ」
まるで当然みたいにわたしを呼ぶから困る。
そんなことで好きが積もる。
周りの目を気にして腰が引けるのは、わたしばっかりだ。
そうちゃんは振り返ったまま待っている。
一歩ぶんしか先にいないのに、それほど離れてはいないのに、距離が遠い。
足が重い。
あの頃みたいに手を引いてはくれないのが、無性に寂しい。
離れたのに。
話しかけてくれなくなったのに。
わたしを避けるくせに。
放課後だけ一緒に帰るのは、ずるいよ。