【短】君と桜色のキス
「待って、靴履いてな――」
「芝生通っていくから大丈夫!」
「初日に中履き汚れちゃう」
「どうせいつかは汚れるんだ。今汚れたって構わないだろ」
そう言う間にもどんどんスピードを上げていく。
わたしは引っ張られてついていくのがやっとで、いつの間にか涙が消えていた。
繋がれた手が熱い。
久しぶりに手を繋いだからか、緊張してうまく走れない。
そんなわたしを気遣ってゆっくり走る翼。
優しい彼が、
やっぱり好きだ――。