【短】君と桜色のキス
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 翼が手を離してくれたのは、校庭の隅にある桜の木の真下。



 満開のそれはとても美しい。



 巨木と言っていいくらいに太くて、広げた枝の数はものすごい。
 地面が盛り上がるほどに根も張っていて、その生命力に圧倒されてしまう。



 見上げれば青空と重なって本当に綺麗だと思った。



 時折吹いてくる柔らかい風が花びらを散らし、わたしたちの間に降る。



 そんな桜を見たまま、翼は振り返らない。



 よくわからないけれど、怒らせたかなって不安になる。


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