【短】君と桜色のキス



「なんで……」




 やっと聞こえた声は怒っていない。
 すごく沈んだ声。泣いているのかと間違えてしまうほどに、震えた声だった。




「翼?」


「なんで避けてんの?」




 いつか聞かれるだろうとは思っていた。むしろ、ここまで我慢して待っていた翼の方がすごい。



 どこかで、わたしはこんな日が来るんじゃないかって。そんな予感だけはあった。
 だから慌てることなく冷静に対応する。




「……だって」




 翼はきっと怒る。わたしの決意を聞いたら怒る。
 でも、言わなかったらもっと怒る。



 本当に優しいやつだから。
 わたしが1人で悩んでるのは、きっと許せないはずだ。


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