【短】君と桜色のキス
「はっきり言ってくれねぇと。俺さ、本当にわからねぇんだ」
「……うん」
悩みなんか言ったことはない。多分、進路で悩んだ時くらいだったと思う。
だって、そんなことで翼の時間を無駄にしたくないから。
翼はやっと振り向いてくれた。
その顔はいつになく真剣で、こんな時なのにドキドキしてしまう。
わたしは深呼吸を繰り返し、思い切って口を開いた。
「翼。今日、わたしがクラスに馴染めないのを見て、助けてくれたでしょ?」
「話しかけるの、いつも苦労してたからさ。ちょっとだけ、な」
「……ありがとう」
素直に感謝の気持ちを伝えると、翼は照れたように頭を搔く。