【短】君と桜色のキス



「彼女って?」




 とぼける翼に腹が立つ。涙のことなんて忘れるほど、体が熱くなった。




「バカ! 彼女いるんでしょ!?」


「いないけど?」


「嘘つき!」


「嘘じゃねえよ!」


「だったら中学の卒業式。あの日に渡した第2ボタンは? 彼女が持ってるんでしょ!!」




 翼が一瞬、怯んだように止まる。口論はわたしの一言が決め手となって終わった。



 つまり、やっぱり翼には彼女がいたってことだ。




「だからさ。もう、わたしに構わないでよ。心配するなら、彼女を――」


「ふざけんなよ!!」




 初めて聞いた声だった。



 噛み付くような勢いで近づいてきた翼は、わたしの両肩に手を置く。
 強い力で、少し痛い。


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