【短】君と桜色のキス



 翼がいきなりわたしを引き寄せる。
 力強く抱きしめられて、頭がついていかない。




「好きだから! 歩美が好きだからそばにいたいんだよ!! 悩みも一緒に解決したいんだよ!!」


「……甘やかさないでよ」


「そんなに悩みを抱え込んだら、歩美が潰れちまう。だから言えよ。全部じゃなくていいからさ」




 なぜこんなに頑固になっていたんだろう。どうして素直になれないんだろう。




「俺に迷惑かけたくないって思ってるなら、悩み言え。それに俺は迷惑だって思ってねえし、むしろ嬉しいんだよ」




 抱きしめられた体が温かい。翼がぶつけてくる感情が温かい。



 もっとそばにいたいって、勝手に心が動き出す。



 なんだか安心して、今まで燻っていた黒いものがなくなっていくみたい。


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