【短】君と桜色のキス



「なに、焦ってんだよ」


「翼が……どこか遠くに行っちゃう気がするから」


「遠ざけようとしてたくせに」


「……うるさい」




 そうだ。この感情。
 翼にぶつけていたもの全て、嫉妬だ。



 わたし以外の誰かが翼の彼女だって思ったら悲しかった。



 デートしてるのかな、とか。
 毎日メールしてるのかな、とか。
 もしかしたら、手を繋いで……なんて考えたら、どうしてか怒りの感情が翼に向いた。




「いいんだよ、歩美のペースで歩けよ。歩美らしく生きていけよ」




 傷つけることが嫌で、翼から離れようって決意したんだ。



 彼女がいるからとか、翼のためにとか、全部言い訳にすぎない。


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