一之瀬さんちの家政婦君
「もしよかったらなんだけど、俺んとこの店で働かない?じいちゃんもあんな感じだし、住むところが必要なら部屋は余ってるからさ。
過保護家主さんみたいに金があるわけじゃないから、大学までは厳しいかもしれないけど」
櫂人は言葉を選びながら、今の自分にできる事を提案した。
今の環境も悪いとは言わないが、女子大生の飛鳥には厳しい世界だ。
血の気の多い漁師だっているだろう。
とにかく、彼女の役に立ちたかった。
「喜島さんにそんな迷惑はかけられないです」
飛鳥の視線は俯き加減で、しかしハッキリと断りを入れる。
こういう返答がくることくらいお見通しだった櫂人は、飛鳥の華奢な肩に両手を添えて「迷惑じゃないから!俺がそうしたいの!」と力強く告げた。