一之瀬さんちの家政婦君

それから、飛鳥はようやく顔を上げる。

まっすぐ、櫂人の目を見た。

「どうして、そこまでしてくれるんですか……?」

飛鳥が置かれている状況を知っていればなおさら疑問は深まる。

あまり関わりたくないと普通なら思うだろう。

「飛鳥ちゃんの事が好きだからに決まってるだろ」

櫂人はハッキリと言い切った。

飛鳥は突然の告白に瞳をパチパチさせた。

そして、嬉しそうに笑いながら「アタシも好きですよ」と返答する。

「……“友だち”ですもんね」

後付けされた言葉が“好き”の格差を象徴した。


“友だち”なんて言うんじゃなかった――…!


櫂人は後悔が先に立たないとこの時身をもって体験した。

しかし、いくら嘆いたところで時間はもとに戻らない。

「俺は友だちじゃなくて、一人の女の子として飛鳥ちゃんが好きなんです」

今度は誤解を生まないようにきちんと丁寧に伝える。
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