一之瀬さんちの家政婦君


これでダメならそこまでだ。


飛鳥は彼の想いを正確に理解したが、急なことで視線を泳がせて困惑していた。

困らせるつもりなんて無かった櫂人だが、なんの前触れもないまま告白したのだから当然か……と謝罪の意味も込めて彼女の肩をポンポンと優しく触れる。

「別にすぐ返事しなくていいから。仕事の件も合わせてゆっくり考えてよ。じゃあ、まだ配達残ってるから俺行くな」

櫂人は少し早口気味にそう告げると、立ち上がって逃げるようにその場を去った。

彼がバイクでその場を後にするのを、飛鳥は黙って見送る。

こんな場所で告白されるなんて思わなかった。

まだ気持ちが落ち着かずザワザワしている。


“友だち”だって言っていたのにそうじゃなかったって事……?


いつから?どうして?


疑問は泡のようにフツフツと湧き出す一方。
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