一之瀬さんちの家政婦君

もしも喜島さんと付き合って、仕事と住む場所もお世話になる事になったら同棲になるのかな……。


いや、でもおじいさんいるし。


慣れない色恋沙汰に飛鳥の頭の中はウワーッとなってしまい、短いショートヘアの頭を両手でくしゃくしゃっとする。

そこへ飛鳥の様子を窺いに漁港のおばちゃんが訪れた。

「さっきのお兄ちゃん、飛鳥ちゃんのコレかい?」

おばちゃんは親指を立ててなんだか楽しそうだ。

にんまりと口角を上げるおばちゃんを見ると、飛鳥は急に恥ずかしくなって「ち、違います!」と思わず否定してしまう。

そして、空のお弁当箱を持って立ち上がると、早歩きで仕事場の市場戻った。

「なんだ、つまんない……」

おばちゃんは不服そうに飛鳥の後を追う。

飛鳥は“まだ彼氏じゃない”と何度も何度も自分に言い聞かせながら午後の仕事に就いた。
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