一之瀬さんちの家政婦君
漁港で櫂人と偶然出会ってから、飛鳥はこの仕事で初めての給料日を迎える。
「飛鳥ちゃん、お疲れ様」
漁港長はそう言って茶封筒を手渡す。
中には現金が入っていた。
昔ながらの現金スタイル。
給料明細だけポンと手渡されるのが主流の現代では珍しい。
しかし、頑張りに見合った分だけの現金を見るとモチベーションも上がるというもの。
「ありがとうございます!」
飛鳥は現金の入った茶封筒を握りしめて深々と礼を述べる。
これで少しでも借金が返せる。
きちんと働いたお金なのだから文句なんて言わせない。
何より、あの人に会いに行ける――…
心の奥でくすぶっているこの気持ちの正体をハッキリさせたい。
仕事終わり、お金を持って彼に会いに行こう。
飛鳥はそう強く決心した。