一之瀬さんちの家政婦君
路地を歩く飛鳥は突然羽交い締めにされた。
「な、なにっ……やだ……!」
危険を感じて激しく抵抗する。
「静かにしろ」
声の主は男。
顔を見ようとするが、覆面を被っていてよく分からない。
「離して……離し――…」
男は抵抗する飛鳥に布に染み込ませたクロロホルムを嗅がせた。
独特の甘い臭い。
飛鳥の意識が段々と遠くなる。
「手間かけさせやがって……」
男が吐露する言葉を最後に、飛鳥は完全に意識を失ってしまう。
人目についてしまう前に、男は飛鳥の体を準備していたワゴンに運び込む。
そして、車ごと闇夜に消えていった。
誰とも知らない人間に拉致されたのはクリスマスイブの前日。
飛鳥はこれから起こる悪夢を知らないまま、深い眠りに落ちていった。