一之瀬さんちの家政婦君

坂の下は見晴らしの悪い交差点。

大学に直結しているその道は、細いし学生やその関係者くらいしか利用しない。

早く早くと急ぐあまり、飛鳥はカーブミラーの確認を怠ってしまった。

「うわっ……!」

「わっ……!ご、ごめんなさい!」

案の定、同じタイミングで曲がり角にさしかかった人とぶつかってしまった。

相手の方が大きくて、飛鳥は跳ね返されるかたちで尻もちをついた。

持っていた手提げ鞄が地面に落下して、中身が飛散する。

「大丈夫?ごめんな……」

尻もちをついている飛鳥に駆け寄ってくれたのは、栗色の髪をした背の高い男性。

「ごめんなさい!道を急いでて……」

飛鳥はあちこちに散らばる鞄の中身をかき集め、乱雑に鞄の中へ押し込んだ。
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